シティプロモーションとは、一言でいえば「地域の魅力を戦略的に発掘・磨き上げ・発信することで、人・モノ・カネ・情報を地域に引き込む活動」です。
単なる観光PRや移住促進とは少し異なります。住民がまちへの誇りや愛着を持つこと(シビックプライド)を土台にしながら、地域の外にも積極的に情報を届けていく、より包括的な取り組みを指します。
研究者や自治体の間で参照されることの多い定義をいくつか見てみましょう。
河井孝仁 東海大学教授は「地域を持続的に発展させるために、その魅力を発掘し、内外に効果的に訴求し、人材・物財・資金・情報などの資源を地域内部で活用可能としていくこと」と定義しています。「地域内部での活用」という視点が重要で、住民が自分のまちを誇りに思い、当事者として動くことが発信と同じくらい大切だという考え方です。
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シティプロモーション自治体等連絡協議会は「地域住民の愛着度の形成を基礎とし、地域の売り込みや自治体名の知名度向上、地域イメージを高め経営資源の獲得を目指す活動」と定義しています。住民の愛着度が「基礎」という表現が印象的です。
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どちらの定義にも共通しているのは、「住民の誇りを出発点にする」という視点です。外向きの発信をいくら強化しても、住民自身がまちを誇りに思っていなければ、発信に厚みは生まれません。
「シティプロモーション」という言葉が日本で使われ始めたのは1990年代後半のことです。2000年代に入って使用頻度が急増し、2014年の「まち・ひと・しごと創生法」施行と地方創生総合戦略の策定を機に、政策として本格的に浸透しました。
現在では「シティプロモーション課」「都市魅力創造課」といった専任部署を設ける自治体が全国各地に広がっています。
似たような言葉がいくつかあるので、整理しておきましょう。
広報(PR)は、行政情報を住民に伝えることが主な目的です。どちらかといえば「今住んでいる人への発信」が中心で、外部へのアピールよりも情報伝達に重きが置かれます。
シティセールスは、移住者・観光客・企業の誘致など、直接的な経済効果や数値成果を狙う活動です。シティプロモーションの一部として含まれることも多いですが、より「売り込み」のニュアンスが強い言葉です。
シティブランディングは、まちのアイデンティティや長期的なイメージを構築・管理するより上位の概念です。シティプロモーションはそのブランディング戦略を実行に移す手段のひとつ、と考えるとわかりやすいかもしれません。
日本が人口減少社会に入って久しいですが、地方と都市部の格差は依然として縮まっていません。東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)への転入超過はコロナ禍でいったん緩和したものの、その後は再び拡大傾向が続いています。
こうした状況のなかで、地方自治体が人口・税収・産業を維持するためには、他の自治体との競争のなかで「選ばれる理由」を積極的に作り出すことが欠かせません。シティプロモーションはその最前線に立つ戦略です。
とはいえ、決して悲観的なことばかりではありません。コロナ禍を経てリモートワークが定着したことや、都会の生活に疲れを感じる若い世代が増えたことで、地方移住への関心は高まり続けています。
ふるさと回帰支援センターへの年間移住相談件数は、2025年に7万3,003件と5年連続で過去最高を更新しました。「地方暮らしに憧れている人」は確実に増えているのです。
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この「潜在的な移住ニーズ」を自分の地域に向けるためには、効果的な情報発信が必要です。どれだけ魅力的なまちであっても、知られていなければ選ばれません。シティプロモーションが担う役割は、まさにそこにあります。
政府は近年、関係人口(特定の地域と継続的なつながりを持つ人々)の創出・拡大を政策の柱のひとつに位置づけており、「ふるさと住民登録制度」の創設も2025年に閣議決定されました。シティプロモーションで積み上げてきた地域のファンやつながりが、こうした新しい制度のなかで評価・活用される流れになっています。
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シティプロモーションに取り組む目的は自治体によってさまざまです。目的を明確にすることが、施策設計の出発点になります。代表的な6つを見ていきましょう。
「○○といえばこのまち」というポジショニングを確立することで、他の自治体との差別化ができます。
ブランド総合研究所が毎年実施している「地域ブランド調査2024」では、都道府県の魅力度スコアの平均が過去最高を記録しました。各地域の取り組みが少しずつ実を結んでいる一方、裏を返せば「やらない自治体が置いていかれる」段階に入ったともいえます。
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人口維持に直結する目的です。前述のとおり地方移住への関心は高まっており、効果的なシティプロモーションによって移住相談件数や移住実績者数の増加が見込めます。
「移住まではしないけれど、この地域が好きでよく訪れたり応援したりしている」という人々が関係人口です。国土交通省の最新推計(2025年発表)では、関係人口は全国で約2,263万人(18歳以上の約22%)に達しています。ふるさと納税の寄付者やイベント参加者、SNSでまちの魅力を広めてくれる人々も、関係人口の大切な一部です。
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地域の食・自然・文化・歴史を魅力として発信することで、観光・交流人口を増やすことができます。インバウンド(訪日外国人)の取り込みにもシティプロモーションは有効です。
返礼品を通じた地域PRは、認知度向上と財源確保を同時に達成できる手段です。単なる「返礼品の充実」にとどまらず、生産者のストーリーや産地の風景を発信することで、寄付者が実際に地域を訪れたり、移住を検討したりする流れを作ることもできます。
住民が「このまちに住んでいることが誇らしい」と感じ、友人や家族に自然とまちの魅力を伝えてくれるようになること──これが「生きた口コミ」を生み出す最も強力な力です。シビックプライドはすべてのシティプロモーション活動の土台であり、ここが育つと外向きの発信も自然と厚みを増していきます。
どんな手段でまちの魅力を発信するかは、ターゲットや目的によって変わります。代表的な7つの手法をご紹介します。
X(旧Twitter)・Instagram・TikTok・YouTube・LINE・Facebookといった各プラットフォームを活用した情報発信は、現代のシティプロモーションの中心的な手法です。
各プラットフォームの特性に合わせた使い分けがポイントで、例えば、観光地やグルメの視覚的な魅力を届けるにはInstagramやTikTok、リアルタイムの情報発信にはX、子育て世帯へのリーチにはLINEなど、ターゲットや媒体の強みに応じて最適なチャネルを選択しましょう。
映像は、言葉だけでは伝わりにくい地域の雰囲気や空気感を届けられる強力な媒体です。YouTubeの長尺動画で地域の暮らしを丁寧に紹介するスタイルと、TikTokやInstagram Reelsで若年層に刺さる短尺コンテンツを使い分けるのが効果的です。
移住検討者向けの情報ポータルや観光プロモーションサイトは、長期的に効果を発揮するデジタル資産です。検索からの流入を確保するSEO対策、スマートフォン対応、問い合わせ窓口への導線整備が基本要件です。自治体公式サイトとは別に「移住・定住専用サイト」を設けることで、移住を検討している人に刺さる情報設計が可能になります。
会議・研修旅行・学術大会・展示会といったMICEを地域に呼び込むことで、参加者の消費による経済効果だけでなく、開催地としてのブランドイメージ向上にもつながります。一度来てもらえれば、その体験がそのまま「このまちのファン」を生む機会になります。
アニメや映画・ドラマの舞台・ロケ地になることで、コアなファン層が全国から訪れるコンテンツツーリズム。費用対効果の高さから近年多くの自治体が注目しています。
まずはロケ誘致の窓口を整備し、撮影に協力的な体制を整えることが入口になります。地元の魅力的な景色や食が作品に登場すれば、それ自体がプロモーション映像となるでしょう。
返礼品の強化と情報発信を組み合わせることで、地域の産品を知ってもらう接点を増やせます。さらに、ガバメントクラウドファンディング(GCF)を活用して地域課題の解決プロジェクトへの共感を募る手法も広がっています。寄付者が「応援したいまち」と感じてもらえれば、ふるさと納税はシティプロモーションの強力な入口になります。
「市民アンバサダー制度」「住民参加型のキャッチコピー募集」「公式ハッシュタグを使った写真投稿キャンペーン」など、住民が自分のまちの魅力を発信する仕組みを整備することで、シビックプライドの醸成と情報発信を同時に実現できます。住民のリアルな声は、行政が発信する「公式の言葉」よりも移住検討者の心に届くことが少なくありません。
実際にシティプロモーションで成果を出している自治体の事例を見ていきましょう。
ふるさと回帰支援センターが発表した2024年の移住希望地ランキングで、群馬県が初の全国1位を獲得しました。その背景にあったのは、全35市町村がセンターの会員に加入し、年間57回のセミナーを組織的に開催するという全県一体の取り組みです。
東京からの好アクセス・豊かな自然・充実した子育て環境を一貫したメッセージで発信し続けた結果が、ランキングという形で可視化されました。また、2025年も移住希望地ランキングで1位に選出され、2年連続の快挙を成し遂げました。
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シティプロモーションアワード2025で金賞・協賛社賞をダブル受賞した名張市の最大の特徴は、独自の指標「なばらぶ指数」を開発し、住民のまちへの愛着・熱量を定量的に管理している点です。「住民がまちを好きかどうか」は感覚的に語られがちですが、それを数値化してPDCAに組み込んだことで、施策の効果を客観的に検証できる体制を整えました。
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「共働き子育て世帯」という明確なターゲットを定め、長い間、一貫したメッセージを発信し続けた流山市の取り組みは、シティプロモーションの教科書的な成功例として全国的に知られています。
首都圏アクセスの良さと充実した子育て支援を掛け合わせた訴求で、人口は策定当初から大幅に増加しました。ターゲットを「絞る」ことで、刺さるメッセージが生まれることを証明した事例です。
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地元の老舗B級グルメ店を発掘・紹介した「絶メシリスト」プロジェクトは、書籍化・テレビドラマ化を経て全国的な注目を集めました。
「まちの宝」を行政が掘り起こしてコンテンツ化し、メディアとの連携で拡散させるモデルとして、多くの自治体の参考になっています。
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シティプロモーションアワード2024で選出された奥州市の事例では、住民が公式マスコットキャラクターを「一緒に育てる」プロセスそのものがシビックプライドの醸成につながっている点が評価されました。行政がトップダウンで作るのではなく、住民の愛着を起点にするアプローチは、継続性という面でも大きな強みを持ちます。
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成功事例を学ぶことと同じくらい、失敗パターンを知っておくことは大切です。多くの自治体が陥りやすい失敗と、それを避けるためのポイントをまとめます。
「誰に、何を伝えて、どんな行動を促したいのか」を最初に定義することが全ての出発点です。「全世代・全方位に向けた発信」は聞こえはよいですが、実質的にどこにも届かない発信になりがちです。
流山市の「共働き子育て世帯」のように、ターゲットを具体化することで、刺さるメッセージとチャネルが自然に絞られます。まずはターゲット像と目標を決める、そこからシティプロモーションはスタートします。
「あの自治体がうまくいったから、うちもやってみよう」という発想は自然ですが、他地域の成功には必ずその地域固有の条件があります。
地理的条件・産業構造・住民気質・ターゲット層が違えば、同じ施策が同じ効果をもたらすとは限りません。他事例から「なぜうまくいったか」を学んで、自分たちの文脈に合わせて応用することが大切です。
施策の効果を定量的に測り、改善を重ねることが、限られた予算で成果を出す最短ルートです。「なんとなくやってみた」「やり切ることが目的になった」という状態を避けるために、施策ごとに測定方法と目標値を事前に設定しておきましょう。
住民の自発的な発信は、行政の公式発信を何倍にも増幅します。市民アンバサダー制度、公式ハッシュタグを使った写真キャンペーン、住民参加型のワークショップなど、住民が「自分たちのまち」として関わる仕組みを作ることが重要です。
シビックプライドが育つと、まちへの関心が継続的なプロモーション活動へと自然につながっていきます。
都市のブランドは、短期間では形成されません。首長交代や担当者の異動があっても施策の一貫性を保つために、シティプロモーションの基本方針や戦略計画を文書化しておくことが重要です。「キャッチフレーズを作っただけ」「単発のバズで終わった」にならないように、継続的に取り組む体制をあらかじめ設計しておきましょう。
シティプロモーションに関して自治体担当者からよく聞こえてくるのが「効果が見えにくい」という声です。実は、これは測り方の問題であることが多いです。
KPIは「アウトプット→アウトカム→インパクト」の3段階で整理すると、施策と成果の関係が見えやすくなります。
アウトプット指標は施策の実施量です。SNSフォロワー数・動画再生回数・相談会開催回数などが該当します。測定が容易で達成感も得やすい反面、これだけを追っていても「選ばれているか」はわかりません。
アウトカム指標は施策が生み出した変化です。移住相談件数・移住実績者数・観光入込客数・ふるさと納税額・地域ブランド調査スコアなどが代表的です。施策の直接的な成果として最も重要な指標群です。
インパクト指標は地域全体への長期的な影響です。転入超過数・合計特殊出生率・企業立地件数などが該当します。シティプロモーションの最終目的と直結しますが、外部要因も大きいため、単独施策との因果関係の証明は難しい面があります。
「移住者向けポータルサイトを作る(アウトプット)→移住相談件数が増える(アウトカム)→移住・定住者が増加し人口が維持される(インパクト)」というように、施策から目標への論理的なつながりを事前に設計する「ロジックモデル」の考え方も有効です。これを使うと、施策の合理性を庁内で説明しやすくなり、評価の軸も明確になります。
シティプロモーションを効果的に進めるには、戦略設計・Webサイトの整備・デジタルマーケティング・効果測定まで、幅広い専門知識と実務経験が求められます。「どこから手をつければよいかわからない」「デジタル面でのサポートをお願いしたい」とお感じの自治体担当者の方は、ぜひEWMグループにご相談ください。
EWMグループ(EWM Japan & EWM Factory)は、東京と佐賀を拠点に、500件超のプロジェクト実績を持つWebインテグレーション企業です。
東京都各局(福祉保健局・産業労働局・交通局など)や佐賀県の「大町町移住ポータルサイト」といった地域プロモーション案件まで、幅広い実績を有しています。
EWMグループの最大の特徴は、「Webのプロ」であるとともに、「地域活性化を自ら実践する企業」だという点です。
代表の友納は、ニアショア型のWeb制作事業を通じて佐賀に雇用を生み出してきた一方で、「地域の労働力を首都圏に提供しているだけでいいのか」という葛藤を抱いていました。その問いに向き合う中で生まれたのが、ITを活用して地域課題に直接取り組む「ソーシャルデザイン事業」です。
収益の一部を地域に還元するという間接的な関与ではなく、地域での取り組みそのものを事業の柱にする——そんな想いのもと、地域メディア「EDITORS SAGA」(サガテレビとの共同)の運営、廃校をリノベーションした「SAGA FURUYU CAMP」の企画・運営、古民家カフェ「こねくり家」の運営(佐賀市街なか再生事業)など、地域の事業者や自治体と協業しながら、従来のIT企業の枠を超えたチャレンジを続けています。
▼代表メッセージ
「まず相談だけでも」というお問い合わせも大歓迎です。
シティプロモーションとは、地域の魅力を戦略的に発掘・発信し、人・モノ・カネを地域に引き寄せる総合的な取り組みです。住民のシビックプライドを土台にしながら、移住促進・観光振興・ふるさと納税・関係人口の創出を一体的に進めることが求められます。
大切なのは「何となく発信する」のではなく、明確な目標とターゲットを設定し、データでPDCAを回し、住民との共創で継続的に取り組むことです。
地方移住への関心が高まり続けている今は、効果的なシティプロモーションに取り組む自治体にとって大きなチャンスでもあります。他の自治体との差は、発信の質と継続性で生まれます。ぜひこの記事を参考に、自分たちのまちらしいシティプロモーションを描いてみてください。