総務省の「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、YouTubeの全年代利用率は約80.8%にのぼり、50代まで各世代で8割超、60代でも7割以上が利用しています。
こうした環境のなか、全国の自治体もYouTubeを積極的に活用しはじめています。
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自治体がYouTubeを活用するメリットは以下の通りです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
総務省の調査が示すように、YouTubeは10代から50代まで各世代で8割超の利用率を誇り、60代でも7割以上が利用しています。
広報紙やホームページだけでは届きにくい若年層にも、従来から行政情報に触れてきた高齢層にも、同時にリーチできるのがYouTubeの大きな強みです。「世代を問わず情報を届けたい」という自治体のニーズにフィットするプラットフォームといえるでしょう。
1分間の動画は、Webページ約3,600ページ分の情報量に相当するともいわれています。
たとえば観光スポットの魅力を伝える場合、文章と写真だけでは限界がありますが、動画なら景色・音・人々の表情・空気感までを短時間で伝えられます。
また、行政手続きの説明や防災訓練の流れなど、複雑な内容を「見せて伝える」ことで、住民の理解度を大きく向上させる効果があります。
YouTubeのチャンネル開設・動画投稿は無料です。テレビCMや新聞広告に比べて圧倒的に低いコストで、全国はもちろん海外の視聴者にも情報を届けられます。
実際に、長野県小諸市では、制作費約9,500円で動画を作り、ふるさと納税額を前年度比約8倍に増やした自治体もあります。予算が限られる小規模自治体でも挑戦しやすいのが、YouTube活用の大きな魅力です。
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ここからは、実際にYouTubeで成果を上げている自治体の事例を目的別に紹介します。各事例から「なぜ成功したのか」を読み解くことで、自庁の動画戦略のヒントが得られるはずです。
2012年に開局した茨城県公式チャンネル「いばキラTV」は、登録者数約18万人を擁する全国屈指の自治体チャンネルです。
2018年には自治体として初の公認VTuber「茨ひより」を起用し、BBCなど海外メディアでも取り上げられました。
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群馬県が2024年に公開した移住PRドキュメンタリーは、実際に群馬に移住して老舗銭湯を復興させた女性のリアルストーリーを描いたもので、約346万回再生を記録。感動を呼ぶ実話ベースのコンテンツが共感を呼んだ好例です。
なお、群馬県はTikTokでも県庁公式アカウント「tsulunos」で600万回再生超のショートドラマを生み出すなど、YouTubeとショート動画の両軸で先進的な取り組みを行っています。
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神戸市の公式チャンネル「KOBE CITY CHANNEL」は、都道府県・政令市・県庁所在地の自治体チャンネルでも圧倒的な登録者数を誇ります。TOHO animationと共同制作したアニメ「ワンダリズム」をはじめ、音楽・防災・市政情報など多彩なコンテンツを展開。「市役所のチャンネルとは思えない」クオリティが若い世代の支持を集めています。
『ワンダリズム きみを呼ぶ声』~神戸・五色塚古墳アニメMVプロジェクト~#五色塚古墳 #HOWLBEQUIET #Wonderism
KOBEであえたね|幕末の神戸へタイムスリップ!?勝海舟、坂本龍馬と出会う歴史ロマンあふれるアニメ|海軍操練所 魅力発信プロジェクト
福島県が2024年に公開した防災VR動画「地震・津波編」は、自宅で大地震に遭遇するシミュレーションをVR映像で再現し、約85万回再生を記録。エンタメ系ではない行政情報・防災コンテンツでも、コンテンツの切り口次第で多くの視聴者に届くことを証明した事例です。
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農林水産省が2020年に開始した「BUZZ MAFF」は、職員自らがYouTuberとして農林水産物の魅力を発信するチャンネルで、登録者約18万人を達成。(2026年3月時点)
中央省庁の事例ですが、「職員が自ら出演する」スタイルは地方自治体にも応用でき、制作の外注コストを抑えながら親近感のあるコンテンツを生み出す手法として参考になります。
上記の成功事例を横断的に分析すると、以下の7つの共通要因が浮かび上がります。
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共通要因 |
ポイント |
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① 企画力・独自性 |
既存の枠組みにとらわれない意外性のある掛け合わせなど、独自の切り口が拡散の起点になる |
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② ターゲットの明確化 |
移住検討者、特定の職種、海外観光客など、「誰に届けるか」を絞り込むことでメッセージが研ぎ澄まされる |
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③ 短尺&明確なメッセージ |
視聴者の離脱を防ぐため、1本の動画につき「1テーマ」に絞り込み、数分程度に凝縮する |
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④ 予算配分の最適化 |
制作だけでなく、広告配信による露出拡大や、視聴データ分析による改善にも適切に予算を配分する |
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⑤ SNS連携と二次拡散 |
YouTube単体での公開に留めず、各SNSの特徴に合わせた告知展開を行い、リーチを最大化させる |
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⑥ 継続的なチャンネル運営 |
単発の企画で終わらせず、年間を通じた定期的な投稿により、自治体のファンやチャンネル登録者を育成する |
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⑦ 多言語・インバウンド対応 |
海外ユーザーを意識した多言語字幕や吹き替え対応を行い、発信力を世界規模へと広げる |
とはいえ、これらを自治体の限られたリソースだけで実現するのは容易ではありません。戦略立案から動画制作・広告配信・効果分析までをワンストップで支援できる外部パートナーの存在が、成功の鍵を握るケースが増えています。
多くの自治体では、映像制作やSNSマーケティングの専門知識を持つ職員が不足しています。
加えて、定期的な人事異動によって担当者が変わるたびにノウハウがリセットされるという構造的な問題もあります。
解決策:異動に左右されない「運用マニュアル」と「チャンネル方針書」を整備したうえで、企画・編集を外部パートナーに委託する体制を構築しましょう。
職員はブランドの方向性の監修と撮影素材の提供に集中し、専門的な編集・配信最適化はプロに任せる分業モデルが現実的です。
動画制作を外部に委託する場合、1本あたり数十万円~100万円超の費用がかかるのが一般的です。そのため、年間で複数本を制作しようとすると大きな予算が必要となり、特に小規模自治体にとっては大きなハードルです。
一方で、職員のみで動画を制作し、ふるさと納税の増加などの成果につなげた事例もあり、必ずしも巨額の予算がなければ始められないわけではありません。
解決策:すべてを外注するのではなく、「日常的な情報発信は内製、大型PR動画は外注」というハイブリッド体制が効果的です。また、制作費だけでなく配信費・分析費にも予算を配分することで、限られた予算でも最大限の効果を引き出せます。
チャンネルを開設して動画を投稿しても、再生回数が1,000回にも満たない動画が大半を占める自治体も少なくありません。実態として、YouTubeチャンネルが「単なる動画置き場(倉庫)」になっているケースも多いのが現状です。
解決策:チャンネルの目的とターゲットを再定義し、具体的な投稿計画を策定しましょう。サムネイルやタイトルにこだわり、YouTube SEO(VSEO)を意識した動画設計を行うことが重要です。また、公開後はSNS連携や庁内Webサイトへの埋め込みなど、視聴導線を丁寧に設計する必要があります。
炎上リスクは常に存在します。自治体の発信は民間企業以上に注目されやすく、一度炎上すると組織全体の信頼に関わります。また、特定の店舗や企業に偏った紹介が批判を受けることもあります。
解決策:SNS運用ガイドラインの策定、投稿前の複数人チェック体制の構築、炎上時の対応フロー事前策定の3点が基本対策です。外部の専門家にガイドライン策定を支援してもらう方法もあります。
再生回数やチャンネル登録者数だけでは、本来の目的(観光客増・移住者増・認知度向上など)に対する効果を正確に測定することは困難です。
解決策:動画の目的ごとにKPIを設定し(例:観光PRなら視聴完了率・Webサイト流入数、移住促進なら相談窓口への問い合わせ数)、定量データと定性データ(アンケート・インタビュー)の両面で効果を検証する仕組みを作りましょう。YouTube Analyticsの活用も不可欠です。
YouTube活用を始めるにあたって、以下のステップで進めると効率的です。
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ステップ |
内容 |
ポイント |
|---|---|---|
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STEP 1 目的設定 |
YouTubeで何を達成したいのかを明確化 |
観光PR/移住促進/行政情報発信/防災等から優先目的を決定 |
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STEP 2 ターゲット設定 |
誰に届けたいのかを具体化 |
年代・居住地・関心事を設定し、ペルソナを作成 |
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STEP 3 チャンネル設計 |
チャンネル名・アイコン・概要欄を整備 |
自治体名を含めた検索されやすいチャンネル名にする |
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STEP 4 コンテンツ計画 |
投稿する動画のジャンル・頻度を決定 |
月2〜4本を目安に、継続できる頻度で計画 |
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STEP 5 制作体制の構築 |
内製と外注の役割分担を決定 |
日常投稿は内製、PR動画は外注のハイブリッドが効率的 |
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STEP 6 動画制作・公開 |
撮影・編集・サムネイル作成・タグ設定 |
VSEO(タイトル・説明文・タグ)を意識し、SNSでも告知 |
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STEP 7 効果測定・改善 |
YouTube Analyticsで分析し改善サイクルを回す |
月次レポートを作成し、PDCAを回す |
YouTubeは世界第2位の検索エンジンでもあります。動画のタイトル・説明文・タグに適切なキーワードを盛り込み、字幕(クローズドキャプション)を設定することで検索結果に表示されやすくなります。タイトルには「自治体名+テーマ」を含めるのが基本です。
縦型ショート動画の活用が加速しています。2024年の調査データでも、栃木県のShorts動画が25,690いいねを獲得するなど、自治体においてもShorts活用の成果が出始めています。長尺動画の一部を切り出してShortsとして再利用する「1粒で2度おいしい」手法も有効です。
YouTubeではサムネイルがクリック率を大きく左右します。文字は大きく読みやすく、色のコントラストを効かせ、人物の表情を入れることがセオリーです。タイトルは30文字以内を目安に、視聴者の関心を引くフレーズを冒頭に配置しましょう。
YouTube単体での拡散には限界があります。X(旧Twitter)・Facebook・Instagram・LINEなど、自治体が運用する他のSNSと連携し、動画公開と同時に告知投稿を行いましょう。また、自治体のWebサイトに動画を埋め込むことも有効な視聴導線になります。
本記事では、自治体がYouTubeを活用する意義、最新の成功事例、運用の実践ステップ、そしてよくある課題とその解決策を解説しました。
YouTube活用の成功には、動画制作だけでなく、チャンネル戦略・配信最適化・効果分析・SNS連携といった総合的なデジタルマーケティングの視点が求められます。