ユーザビリティテストとは
ユーザビリティテストとは、実際のユーザーにWebサイトやアプリを操作してもらい、その行動と発言を観察することで「使いやすさの課題」を発見する評価手法です。ユーザーがどこでつまずき、なぜ迷うのかを直接観察することで、制作者側では気づきにくい問題点を浮き彫りにできます。
テストの目的は大きく2つに整理されます。一つは「形成的評価」と呼ばれるもので、実際のWebサイトや開発段階のプロトタイプを対象に、ユーザビリティ上の問題点を発見して改善の手がかりを得ることを目指します。もう一つは「総括的評価」で、タスク達成率や操作所要時間といった数値を用いてユーザビリティの度合いを定量的に測定します。現場では「改善の手がかりを得る」形成的評価の活用が中心となるケースが多いでしょう。
なお、ユーザビリティとは「見た目のデザイン」だけを指す言葉ではありません。国際規格ISO 9241-11:2018(日本ではJIS Z 8521:2020として規格化)では、ユーザビリティを「特定のユーザが特定の利用状況において、システム、製品又はサービスを利用する際に、効果、効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い」と定義しています。
つまり、誰が・どのような状況で・何の目的で使うかを踏まえた上で、初めてそのサイトが使いやすいかどうかを評価できるのです。
参照
- 日本産業標準調査会(JISC)「JIS Z 8521:2020 人間工学-人とシステムとのインタラクション-ユーザビリティの定義及び概念」
ユーザビリティの5要素
ユーザビリティ研究の第一人者として知られるヤコブ・ニールセン博士は、ユーザビリティを構成する5つの要素を次のように整理しています。
- 学習しやすさ(Learnability):初めて使うユーザーでも迷わず操作を始められるか
- 効率性(Efficiency):一度慣れれば高い生産性で操作できるか
- 記憶しやすさ(Memorability):しばらく使わなくても再び使い始めたときにすぐ操作できるか
- エラー(Errors):エラーが起きにくく、起きても容易に回復できるか
- 主観的満足度(Satisfaction):使っていて不快感がなく、満足感を得られるか
ユーザビリティテストでは、これら5要素を評価軸の土台として活用することで、改善の方向性を絞り込みやすくなります。「どこを見ればいいかわからない」と感じたときは、この5要素を出発点にして評価項目を整理するとよいでしょう。
参照
- Nielsen Norman Group「Usability 101: Introduction to Usability」
ユーザーテストとの違い
「ユーザーテスト」と「ユーザビリティテスト」は混同されやすい言葉です。ユーザーテストはユーザビリティテストを含む広い意味で使われることも多いのですが、両者を区別する場合は、次のように整理されることがあります。
ユーザーテストは、「このサービスのコンセプトはユーザーに受け入れられるか」「このアイデアは必要とされているか」を検証することが目的です。操作のしやすさではなく、コンセプトやアイデアそのものへの反応を確かめる点が特徴です。
一方、ユーザビリティテストは、受け入れの可否ではなく「使いやすさの課題を発見して改善につなげること」が目的です。評価対象は既存サイトや操作可能なプロトタイプが中心ですが、紙に描いた画面(ペーパープロトタイプ)やワイヤーフレームの段階から実施することもできます。
なお、システム開発の文脈では、ユーザーテストがユーザー受入テスト(UAT)を指すこともあります。どちらの意味で使われているかは文脈から読み取るようにしましょう。
UI/UXとユーザビリティの関係
ユーザビリティと並んでよく使われるのが「UI」「UX」という言葉です。UI(ユーザーインターフェース)は、画面のレイアウト・ボタン・メニュー・文言など、ユーザーとサイトが接する部分を指します。UX(ユーザーエクスペリエンス)は、サイトを知る前の期待から、利用中の体験、利用後の印象までを含む、ユーザーが得る体験全体を指す言葉です。 この3つは並列の概念ではありません。UIはユーザビリティを左右する主な対象で、ユーザビリティは良いUXを支える要素の一つ、という関係にあります。使いにくいサイトで良い体験を得ることは難しいため、ユーザビリティはUXの土台といえます。ただし、使いやすいだけでは良いUXは成立しません。情報の信頼性、ブランドへの印象、目的を達成したときの満足感なども体験の質を左右します。ユーザビリティテストは、このうち「使いやすさ」の課題を具体的に洗い出し、UX改善の足がかりを得るための手法と位置づけられます。
アクセシビリティとの違い
ユーザビリティと間違えやすい単語としてアクセシビリティがあります。アクセシビリティは、障がいの有無やその程度、年齢、利用環境にかかわらず、サイトの情報や機能を利用できるかどうか、またはその到達度を表す概念です。
ユーザビリティが「想定したユーザーが、どれだけ効果的・効率的・満足して使えるか」という使いやすさの度合いを問うのに対し、アクセシビリティはできるだけ幅広い人や利用環境を対象に、情報や機能へ到達・利用できるかを重視する点が異なります。
両者は対立する概念ではありません。JIS X 8341-1ではアクセシビリティを「様々な能力を持つ最も幅広い層の人々に対する」ユーザビリティと定義しており、「あらゆる人のユーザビリティ」と捉える考え方もあります。
アクセシビリティを高めることは結果的に多くのユーザーの使いやすさ向上にもつながります。
参照
- デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」
アクセシビリティについては以下の記事でも詳しく解説しています。
ユーザビリティテストが必要な理由
Webサイトの改善施策を検討する際、担当者はアクセス解析データを手がかりにすることが多いでしょう。
しかし、解析ツールで分かるのは「どのページで離脱したか」「どのボタンがクリックされたか」という事実であり、「なぜそこで離脱したのか」という理由ではありません。フォームページからの離脱が多い場合でも、その原因がボタンの気づきにくさにあるのか、入力項目の多さにあるのか、エラーメッセージの分かりにくさにあるのかは、数値だけでは判断できないのです。
また、制作者がユーザー視点に立つことには構造的な限界があります。自分たちのサイトを何度も見ているうちに、「このボタンで次に進める」「ここに必要な情報がある」という固定観念が形成されます。その結果、初めてサイトを訪れたユーザーが感じる戸惑いや迷いに気づけなくなってしまいます。どれほどユーザー視点を意識しようとしても、制作者の主観には限界があるのです。
さらに、テストによって得られた映像・行動ログ・発言の記録は、社内の意思決定を動かす力を持っています。「このフォームは使いにくいと思う」という担当者の主観的な意見は、上長や他部署の異論にぶつかることがあります。
しかし、実際のユーザーがサイト操作でつまずいている場面の映像があれば、議論を客観的な事実に基づいて進めることができます。問い合わせ数やコンバージョン率が改善しないという課題を抱えている場合、原因特定の手段としてユーザビリティテストは特に有効です。
ユーザビリティテストで分かること
ユーザビリティテストを実施することで、具体的にどのような情報が得られるのでしょうか。大きく以下の3点が挙げられます。
ユーザーの行動・心理の可視化
ユーザーが「どこで迷っているか」「何を期待してクリックしたか」「なぜ入力をやめたか」といった、内面的な行動原理が観察できます。数値データでは見えにくいインサイトが、実際の操作観察から浮かび上がります。「ユーザーはこう動くはず」という担当者の想定と、実際のユーザーの行動のギャップを目の当たりにすることで、改善の方向性を正確に定められるようになります。
制作者が気づかなかったつまずきポイントの発見
「このボタンは明らかに押せる」「このラベルの意味は伝わっている」と思っていたデザインが、ユーザーには認識されていなかった——そのような想定外の発見は、ユーザビリティテストの代表的な成果です。ナビゲーションのラベルの誤解、フォームのエラーメッセージの分かりにくさ、スクロールしなければ見えない重要ボタンなど、改善インパクトの大きい課題が見つかることがあります。
定量・定性データによる両軸の評価
タスク達成率や操作所要時間といった定量データと、発言・表情・操作パターンといった定性データを組み合わせることで、課題の深さと性質を多角的に把握できます。
どの課題がどれだけ多くのユーザーの目的達成を妨げているかが見えるため、改善の優先順位を判断する材料になります。また、テスト結果はチーム内やステークホルダーへの課題共有の共通言語にもなり、改善の優先順位づけを組織として進めやすくなるという効果もあります。
ユーザビリティテストの種類
ユーザビリティテストには、費用・精度・実施しやすさが異なる複数の手法があります。ここでは実施形式(対面型・リモート型)と、手軽さを重視した簡易型に分けて紹介します。簡易型は対面・リモートどちらの形式でも実施できます。目的・予算・リソースに応じて適切なものを選ぶことが重要です。
対面型テスト
対面型テストは、インタビュールームなどの会場で被験者に実際にサイトを操作してもらい、モデレーターと観察者がその場で行動・発言を観察する手法です。被験者は1回につき1名ずつ、全体で5名程度を目安に実施するのが一般的です。モデレーターが同席して対面で質問できるため、深い洞察を得やすいのが最大の特徴です。被験者の表情・手の動き・視線といった非言語的な反応も直接観察できるため、精度の高い課題発見につながります。
その一方で、会場の準備・被験者のリクルーティング・実施体制の整備など、費用と時間のコストが大きいことがデメリットです。大規模なサイトリニューアルや、ナビゲーション構造そのものを見直すような根本的な設計改善を検討している場面に向いています。
リモート型テスト
リモート型テストは、ZoomなどのWeb会議ツールを使ってオンライン上でテストを行う手法です。全国どこからでも被験者を集めやすく、会場費がかからないため、対面型と比べてコストと期間を削減できます。被験者が自宅でリラックスした状態でテストを受けられる点も、より実際の利用環境に近いリアルな行動を引き出す利点となります。
ただし、表情や手元の細かな動きは観察しにくく、スマートフォンでの指の迷いや誤タップなど細かな情報が取りにくくなります。また、通信トラブルや画面共有の不具合といった技術的なリスクもある点に注意が必要です。改善サイクルを早く回したいケースや、コスト制約がある場合に適した手法です。
簡易型テスト
簡易型テストは、同僚や知人に依頼して気軽に実施できる、最小コストの手法です。被験者には、担当外の部署のメンバーなど、対象サイトに慣れていない人を選ぶのがポイントです。事前準備を大掛かりにしなくても、第三者の視点でサイトを操作してもらうだけで、驚くほど多くの課題が発見されることがあります。はじめてユーザビリティテストを試みる場合や、小さな仮説を素早く確認したい場面に向いています。
注意点として、被験者がターゲットユーザーと乖離している場合は結果の信頼性が下がることや、テスト設計が甘いとフィードバックが散漫になることが挙げられます。「まずやってみる」という一歩を踏み出すための手法として位置づけ、本格的な意思決定が必要な場面では別の手法と組み合わせる設計が望ましいでしょう。
ユーザビリティテストの観点と評価項目
評価項目は、テストで明らかにしたいことから逆算して選ぶのが基本です(目的の決め方はユーザビリティテストの進め方Step1で解説します)。代表的な評価観点として、以下の5つを押さえておきましょう。各観点が主に関わるユーザビリティの要素も併記しています。
ナビゲーションの使いやすさ
主に関わる要素:学習しやすさ・記憶しやすさ
ナビゲーションの観点では、ユーザーが目的のページに迷わずたどり着けるかどうかを確認します。メニュー構成がユーザーの思考順序と合っているか、パンくずリストや検索機能が有効に機能しているかが評価のポイントです。
特に情報量が多いサイトでは、メニューのラベルが分かりにくかったり、階層構造が深すぎて目的のページにたどり着けなかったりといった問題が起きやすくなります。「どこにあるかわからない」という状況が続くと、ユーザーはサイトを離脱してしまいます。テスト中に参加者が「ここかな…」と迷いながらメニューを行き来する様子は、ナビゲーション課題の典型的なサインです。
コンテンツの可読性
主に関わる要素:効率性・主観的満足度
文章・配色・レイアウトが、ユーザーにとって読みやすい状態になっているかを評価します。文字サイズやコントラストが不足していないか、一画面あたりの情報量が多すぎて内容の理解に時間がかかっていないかを確認します。
制作者にとって「当然読める」と感じるコンテンツでも、初見のユーザーには意図が伝わりにくい表現になっているケースは珍しくありません。テスト中に「どういう意味だろう」「ここはよく分からなかったので読み飛ばした」といった発言が出た場合、それは可読性の課題を示す重要なサインです。文章の長さ・専門用語の使用・見出しの有無なども合わせて確認しましょう。
操作の直感性・導線
主に関わる要素:学習しやすさ・効率性
ボタンやリンクが「押せる・クリックできる」とユーザーが直感的に認識できるか、目的の操作に向かう導線がスムーズかを確認します。ユーザーはサイトを使う際にマニュアルを読みません。デザインが与える見た目の手がかりに従って直感的に動きます。そのため、「ボタンに見えない」「リンクだと気づかれない」という問題は、コンバージョンを直接妨げる要因になります。
ユーザーフロー(目的達成までの経路)が設計通りに機能しているかも、合わせて評価しましょう。「申し込みフォームへ行くにはどうすればよいか」といったタスクを設定し、ユーザーがどのような経路でゴールにたどり着くかを観察することで、想定外の迂回経路や行き詰まりポイントを発見できます。
フォームの使いやすさ
主に関わる要素:エラー耐性・効率性
入力フォームは、資料請求・問い合わせ・購入申込みなど、WebサイトのCVR(コンバージョン率)に直接結びつく要素です。入力欄のラベルが分かりやすいか、エラーメッセージが原因と修正方法を明示しているか、必要なステップ数が多すぎないかを評価します。
フォームの使いにくさはEFO(入力フォーム最適化)の観点でも重要なテーマであり、ユーザビリティテストで発見した課題をそのまま改善施策に落とし込みやすい領域です。「どこで入力を止めたか」「どのエラーで迷ったか」をテスト中に観察することで、改善インパクトの高い箇所を特定できます。
モバイル対応の品質
主に関わる要素:効率性・エラー耐性
多くのサイトでスマートフォン経由のアクセスが過半を占める現在、モバイル環境での操作性は欠かせない評価観点です。タップ可能な領域が小さすぎないか、PC向けに設計されたコンテンツがスマートフォン画面で崩れていないか、スクロール量が多すぎて目的の情報にたどり着けないかを確認します。
テストをPC環境のみで実施すると、スマートフォン利用者が実際に感じる操作の不便さを見落とすリスクがあります。特にボタンのタップ領域の大きさ・フォーム入力時のキーボード表示との兼ね合い・横スクロールの発生などは、モバイルならではの確認事項として設計時に盛り込みましょう。アクセス解析でPCとスマートフォンの利用比率を確認し、比率に応じてテスト環境を配分すると効率的です。
ユーザビリティテストの進め方
ユーザビリティテストは、以下の6つのステップで進めます。各ステップで「やること」と「よくある失敗」を押さえることで、初めての実施でも質の高い結果を得やすくなります。
Step 1:目的と対象の設定
テストを始める前に、「何を明らかにしたいのか」を具体的に定めます。「なんとなく使いにくそうなので確認したい」というふんわりした目的では、テスト後に得られるフィードバックも散漫になりがちです。「フォームページへ到達後の離脱が多い。その原因を特定したい」のように、課題の仮説を持った上で目的を設定することで、評価する観点の選定からタスク設計、分析まで一貫した調査ができます。
評価対象は、開発中のプロトタイプでも現行サイトでも構いません。開発フェーズの早い段階でテストを実施し、課題を早期に発見できれば、後工程での大きな手戻りを防ぐことができます。プロトタイプは、紙に描いた画面やワイヤーフレームの段階でも対象にできます。
Step 2:テストプランの策定
目的と評価対象が決まったら、実施形式・被験者条件・スケジュール・観察体制を決めます。対面型・リモート型・簡易型のどの手法で行うか、何名の被験者を用意するか、モデレーターと観察者をどう配置するかを具体的に計画します。あわせて、録画や発言データの利用に関する同意書と、被験者への謝礼も準備しておきましょう。
このタイミングで「どこに課題があると想定するか」という仮説を明示しておくことも重要です。仮説と実際のテスト結果の乖離を比較することで、担当者自身の思い込みに気づき、施策の優先順位をより正確に判断できるようになります。仮説がなければ結果の解釈にもブレが生じやすいため、事前の仮説立案はテストの質を高める重要なステップです。
Step 3:タスクとシナリオ設計
タスクとは、テスト参加者に実際に行ってもらう操作課題のことです。実際のユーザーが行う可能性のある行動を設定し、「どこから始めるか」と「どうなれば完了か」のスタートとゴールを明確にします。
タスク設計でよくある失敗が、「AページからBボタンを押してください」のように操作の手順を指示してしまうことです。手順を指定すると参加者に答えを与えることになり、ユーザビリティの課題が見えなくなってしまいます。「旅行保険に加入する手続きを進めてみてください」のように、目的だけを伝えて操作はユーザーに委ねる形で設計しましょう。シナリオには参加者がリアリティを感じられる背景状況を添えると、より自然な操作行動を引き出せます。
タスクごとに制限時間の目安も決めておきます。また、本番の前に社内メンバーで予備テスト(パイロットテスト)を行い、タスクの文言が誤解なく伝わるか、所要時間が想定内に収まるかを確認しておくと安心です。
Step 4:テストの実施と記録
テストを実施する際、モデレーターがもっとも意識すべきは参加者にバイアスをかけないことです。テストでは、参加者に考えていることを声に出しながら操作してもらう思考発話法(Think Aloud)を用いるのが一般的です。
参加者に操作方法を尋ねられても答えは示さず、どうなると思いますか?と問い返すのが基本です。参加者が詰まっている場面でも助け舟は出さず、事前に決めた制限時間を超えた場合はタスクを終了して次に進みます。
テスト開始前には、「評価しているのはサイトであって、あなたの操作スキルではありません」という点を参加者に伝え、安心してテストに臨める雰囲気をつくることもモデレーターの重要な役割です。
テスト中は、参加者の行動・発言・表情・操作ログをできる限り詳細に記録します。画面収録や映像撮影を活用し、後から見返せる状態にしておくことで分析の精度が上がります。観察者が複数いる場合は記録を分担し、見落としを防ぐようにしましょう。
Step 5:データ分析と課題の特定
テスト終了後、収集したデータを整理・分析して改善点を特定します。タスク達成率・所要時間といった定量データと、発言・操作の迷い・表情変化といった定性データを照合し、複数の参加者に共通して確認された課題を優先的に抽出します。
1人だけが詰まった課題よりも、多くの参加者に共通して見られた問題を優先するのが基本です。なお、5名程度のテストでは定量データは傾向をつかむ参考値として扱い、課題の特定は定性データを中心に行います。
すべての課題に同等のリソースを割くのは現実的ではありません。「改善した場合のインパクトの大きさ」と「改善に必要な工数」を軸に課題の優先順位をつけ、コンバージョンや離脱に直結する問題から着手するのが原則です。チーム内で分析結果を共有し、改善方針について合意を形成する場を設けることも、施策を確実に推進するうえで有効です。
Step 6:改善実施と再テスト
課題への対応策を実施したら、改善前と同様のシナリオで再テストを行い、前回特定した課題が解消されているかを確認します。改善したつもりが別の問題を生んでいた、というケースも珍しくないため、再テストによる検証は欠かせません。
ユーザビリティテストは一度実施して終わりにするものではなく、このステップを継続的に繰り返すことがWebサイトの品質向上につながります。大規模なテストを年に1回行うよりも、小規模なテストを繰り返すほうが継続的に課題を発見・改善できます。PDCAサイクルを小さく・速く回すことを意識し、スモールスタートで定着させることが現実的なアプローチです。
ユーザビリティテスト実施上の注意点
ユーザビリティテストを初めて実施する際に陥りやすい失敗と、押さえておくべき注意点を整理します。
被験者の人数は5名を目安にする
多くの被験者でテストを実施すれば、それだけ多くの課題が見つかると思われがちですが、少人数でも主要な問題の大部分を発見できることがユーザビリティ研究の分野で知られています。ヤコブ・ニールセン博士は1993年に共同研究者と発表した数理モデルをもとに、5名のテストでユーザビリティ上の問題の約85%を発見できると説明しています。
参照
- Nielsen Norman Group「Why You Only Need to Test with 5 Users」
そのため、まず5名で実施し、改善してから再度テストするサイクルを回すことを検討しましょう。ただし、この目安はターゲットユーザーの特性がおおむね共通している場合の考え方です。
年代やITリテラシーが大きく異なる複数のユーザー層がいる場合は、層ごとに数名ずつ被験者を確保しましょう。また、タスク達成率などの数値を統計的に比較したい場合は、より多くの被験者が必要です。
被験者はターゲットユーザーに近い人を選ぶ
社内スタッフだけを被験者にすると、サイトの構造や表現に慣れた人の視点になってしまい、初見のユーザーが感じる課題を見つけにくくなります。
年齢・ITリテラシー・サービスの利用経験などの条件を設定し、実際のターゲットユーザーに近い条件を満たす方を被験者として選びましょう。簡易型テストで社内メンバーに依頼する場合も、対象サイトの制作・運用に関わっていない人を選ぶことが大切です。
モデレーターは中立性を保つ
「このボタン、わかりにくいと思いませんか?」のような誘導的な質問は、参加者の発言をゆがめてしまいます。「今、どのような点が気になりましたか?」「次にどうしようと思いましたか?」のように、事実と思考を引き出す開いた質問に徹することが大切です。
スモールスタートで継続する設計を優先する
一回のテストですべての課題を解決しようとすると、テスト設計が複雑になりすぎて実施ハードルが上がります。「まず1つの主要フローだけ検証する」といった範囲の絞り込みから始め、チームが継続して取り組める仕組みを整えることを優先しましょう。
内製か外注かの判断
ユーザビリティテストを初めて検討する方にとって、「自社で対応できるのか、専門会社に依頼すべきか」は重要な判断ポイントです。目的・規模・リソースを踏まえて選択しましょう。
内製が向くケース
開発初期のプロトタイプ段階で仮説を素早く確認したい場合や、コスト制約が大きく試験的に取り組みたい場合、改善サイクルをスピーディに回したい場合は、内製での実施が向いています。簡易型テストであれば、外部リソースをほとんど使わずに実施できます。内製から始めることで、自社内にテストのノウハウを蓄積できるというメリットもあります。
外注が向くケース
大規模なサイトリニューアルや新規事業立ち上げなど、客観的なデータに基づく意思決定が必要な場面では、専門会社へ依頼することも有効な選択肢です。ニッチなBtoBターゲットなど、厳密な被験者条件が必要な場合も、外部の調査ネットワークを活用した方が適切な被験者を集めやすくなります。
外注先を選ぶ際は、次の3点を確認軸として活用しましょう。
1つ目は、単に調査レポートを提出して終わりではなく、抽出した課題を具体的な改善施策に落とし込む実装力があるか。2つ目は、調査設計からモデレーション・分析・実装まで一気通貫で対応できるか。3つ目は、担当者と共にプロセスを進めながら、社内のノウハウ蓄積を支援してくれるかです。
まとめ
ユーザビリティテストは、アクセス解析では見えない「なぜ」の部分を明らかにし、Webサイト改善の根拠を与えてくれる手法です。ユーザビリティの5要素を評価軸に、対面型・リモート型・簡易型の中から自社のリソースに合った手法を選び、6つのステップに沿って進めることで、内製でも一定の成果を得ることができます。重要なのは、一度実施して終わりにするのではなく、PDCAを繰り返しながら継続していく姿勢です。
「どの手法から始めればよいか判断したい」「専門的な観点からサイトの課題を洗い出したい」「外注先を探している」という方は、EWMグループへお気軽にご相談ください。調査設計から課題特定、改善実装まで、Webサイト改善を一気通貫でご支援します。