自治体向けCMSとは
自治体向けCMSとは、市区町村や都道府県などの公共機関がWebサイトを運営するために使うコンテンツ管理システム(Content Management System)です。大きく、自治体での利用を前提に開発された自治体特化型と、企業サイトなどでも幅広く使われる汎用型に分けられます。
一般企業向けCMSとの大きな違いは、公共性・法令準拠・複数部署での共同運用を前提に設計されている点です。たとえば、アクセシビリティに配慮したテンプレート、複数段階の承認フロー、部署ごとの権限設定、セキュリティ強化機能などを備えているものが多くあります。また、調達時には一般競争入札やプロポーザル方式など、自治体ごとの調達手続きや仕様に沿った対応も必要です。
自治体のWebサイトは、住民誰もが利用するものです。そのため、高齢者や障がいのある人、外国人を含むすべての人が情報にアクセスできる環境を整える必要があります。自治体向けCMSを選ぶ際は、こうした要件への対応をシステム側で支援できるかどうかを確認することが重要です。
市区町村の8割以上がCMSを利用
公益社団法人日本広報協会が全国の市区町村を対象に実施した「市区町村広報広聴活動調査(2025年度)」によると、回答した1,624団体のうち1,385団体(85.3%)がCMSを利用しています。CMSは、すでに多くの自治体にとって標準的な仕組みになっているといえます。
同調査では、利用されているCMSの製品名も集計されています。導入されている製品は多岐にわたり、自治体特化型のCMSだけでなく、Movable TypeやPowerCMSといった汎用型のCMSや、独自開発のシステムを使う自治体もあります。
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自治体サイトの運用課題
CMS導入前に、自治体が抱える代表的な運用課題を整理しましょう。自組織の現状と照らし合わせながら読み進めてください。
人事異動に伴う属人化リスク
自治体ホームページの更新が特定の担当者のHTML知識に依存していると、人事異動のたびに引き継ぎの負担が生じます。前任者しか更新方法を知らない状態では、緊急時に必要な情報を発信できないおそれもあります。
専門的なコーディングをせずに更新できる環境を整えれば、担当者が変わっても同じ手順でページを更新が可能です。手順の標準化やマニュアル整備と組み合わせることで、引き継ぎ負担の軽減が期待できます。自治体では人事異動によって担当者が交代することも多いため、初めて操作する職員でも扱いやすいかが、CMS選定の重要なポイントになります。
アクセシビリティへの対応
2022年5月に施行された「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」を受け、公共機関のWebサイトには、ウェブアクセシビリティへの積極的な対応が求められています。技術基準としては、JIS X 8341-3の適合レベルAAへの準拠が目標とされており、自治体のWebサイト構築・更改でも、要件として仕様書に記載されるケースが増えています。
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公的機関の具体的な取り組み方は、総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)」に示されています。自治体は、目標とする適合レベルや対象範囲を定めたウェブアクセシビリティ方針を策定・公開し、達成に向けて取り組むことが求められています。
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手作業で対応するには膨大な工数がかかります。CMSに入力チェックや検証を支援する機能があれば、担当者の負担を抑えながら、基準への適合を進めやすくなります。対応状況の詳細は、デジタル庁や所管官庁の最新情報をご確認ください。
予算の厳しい制約
自治体は単年度予算制のため、CMS更改にかかる費用は、構築や移行にかかる初期費用と月次運用費に分けて計画することが重要です。高額な初期投資で単年度予算を圧迫しないよう、クラウド型の活用による初期費用の抑制も検討に値します。
また、CMS導入によって外部に委託していた更新業務を内製化できる場合は、中長期的なコスト削減効果を試算しておくと、調達の意思決定を進めやすくなります。その際は、内製化後の人件費や研修費も含め、全体の費用対効果を比較することが大切です。
自治体向けCMSで確認したい主要機能
製品選定に先立ち、自治体CMSに必要な機能を整理します。調達仕様書の要件定義にも活用できます。
承認フローおよび権限管理の機能
自治体のWebサイト運営では、担当職員が作成したコンテンツを上長や広報担当が段階的に確認したうえで公開する、といった承認フローが欠かせません。CMSがこの承認フローに対応していないと、メールや電話でのやり取りが増え、公開までに時間がかかります。
部署ごとに編集できるページを制限する権限管理も不可欠です。たとえば、福祉課が福祉関連ページのみを編集できるようにし、他部署のページを誤って上書きできない設計にすることが重要です。また、災害などの緊急時に承認手順を切り替えられる機能があれば、初動対応を迅速化できます。
緊急情報の発信機能
台風や地震、感染症などの緊急時に、住民へ迅速に情報を届ける専用機能が備わっているか確認しましょう。通常の承認フローを経ずにトップページに緊急バナーを表示する機能や、あらかじめ用意したテンプレートを数クリックで公開する仕組みが有効です。
また、静的HTMLの書き出しに対応したCMSであれば、アクセス集中時もサーバーへの負荷を分散し、Webサイトが停止するリスクを軽減できます。
アクセシビリティ対応機能
JIS X 8341-3(適合レベルAA)への適合を目指すうえで、準拠するテンプレートが標準提供されているか、代替テキスト(alt属性)の入力を促すなどのチェック機能があるかを確認します。JISの改正を見据え、WCAG 2.2で追加された達成基準にテンプレートやチェック機能が対応できるかも、あわせて確認しておくと安心です。
また、色覚シミュレーション機能やスクリーンリーダーなどの支援技術で利用できるかも、選定時に確認すべきポイントです。ウェブアクセシビリティ方針や試験結果のページを、通常のページと同じ手順で作成・更新できるかも確認しましょう。アクセシビリティ機能が充実していても、掲載するコンテンツ側で対応しなければ効果は限定されてしまいます。そのため、CMSの機能と運用ルールをセットで考えることが大切です。
セキュリティ対策機能
自治体のWebサイトでは、改ざんや不正アクセスなどのリスクに備え、構成や運用環境に応じたセキュリティ対策を講じる必要があります。Webアプリケーションファイアウォール(WAF)・二段階認証・IP制限・自動バックアップといった機能が搭載されているかを確認しましょう。
また、CMSの管理画面や運用環境を庁内ネットワークから利用する場合は、総合行政ネットワーク(LGWAN)の要件を満たす構成になっているかも重要です。クラウド型の場合は、ベンダーが定期的にセキュリティパッチを適用するかどうかを、保守契約の内容で事前に確認しておきましょう。
参照
- 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)「総合行政ネットワーク(LGWAN)」
多言語対応機能
外国人住民や訪日観光客への情報発信も、自治体サイトの重要な役割です。日本広報協会の2025年度調査では、外国語に対応している市区町村は1,200団体(73.9%)で、その多くが自動翻訳機能を利用しています。
自動翻訳は低コストで多くの言語に対応できる一方、防災情報や手続きの案内では誤訳のリスクがあります。重要な情報は翻訳済みのページを用意できるか、言語ごとに独立したURLで公開できるかを確認しましょう。
住民が情報を探しやすくする機能
CMSを選ぶ際は、職員の使いやすさだけでなく、住民が必要な情報にたどり着けるかという視点も欠かせません。スマートフォンで閲覧しやすい表示に対応しているか、サイト内検索の精度は十分か、よくある質問のページを作成・管理しやすいかを確認しましょう。
自治体向けCMSの選び方
CMSの機能要件を整理できたら、次は、どの製品が合うかを判断するための選定軸を明確にします。
自治体の規模によって、重視すべき選定ポイントの優先順位は変わります。自庁の規模に近い列を目安に、確認の順番を整理してみてください。
| 選定ポイント | 小規模(町村など) | 中規模(市など) | 大規模(政令市・都道府県など) |
|---|---|---|---|
| 操作性・研修コスト | 少人数の兼務担当が多いため、異動直後でも迷わず操作できるかをトライアルで確認する | 更新者が増えるため、研修費やマニュアル整備費を含めた総コストで比較する | 更新者・異動者とも多く、研修負担が積み上がりやすい。ヘルプデスクの利用料も含めて比較する |
| 複数部署での管理 | 部署数が限られるため、基本的な権限設定と簡易な承認フローがあるかを確認する | 各部署が直接更新できる体制を想定し、権限設定と承認ルートの柔軟さを重視する | 多段階・部署横断の承認ルートに対応できるかを重視する |
| 拡張性・外部連携 | 防災情報やSNSとのAPI連携など、必要最小限の連携に対応できるかを確認する | 必要に応じて、防災情報システムやSNSとの連携に加え、将来の機能追加に対応できるかを確認する | 観光・子育てなど複数のサブサイトを一元管理できるマルチテナント機能の有無が重要になる |
| サポート・保守体制 | 自庁で対応できる人員が限られるため、問い合わせ窓口の手厚さを重視する | 自治体への導入実績と、セキュリティパッチへの対応力を確認する | SLAの内容、5年以上の保守契約の可否、契約期間中のバージョンアップ方針を確認する |
| 総所有コスト | 初期費用を抑えられ、単年度予算に合わせやすいクラウド型を軸に検討する | 予算規模・運用体制・契約期間の3点で、クラウド型とオンプレミス型を比較する | 初期投資は大きくなるが、長期のランニングコストを最適化できるオンプレミス型も選択肢に入れる |
操作性が高く、研修コストを軽減できるか
年1〜2回の人事異動を前提にすると、最も重視すべき判断基準は「初めてでも迷わず操作できるか」です。デモ環境でトライアルを行い、異動直後の職員でも主要な更新作業を完了できるか確認しましょう。
また、製品価格だけでなく、導入時のトレーニング費、運用マニュアルの整備費、ヘルプデスク利用料などを含めた総コストで比較することが大切です。操作が複雑なCMSは、短期的には安価でも、研修費が積み重なり、最終的な費用が高くなることがあります。
複数の部署でホームページを管理できるか
自治体のホームページを広報部門が一括で管理している場合、各部署の情報が広報を経由して公開されるまでに時間差が生じやすくなります。そこで確認したいのが、複数の部署が自らCMSにアクセスして更新できる仕組みを備えているかどうかです。
部署や役職ごとに操作範囲を制御できる権限設定があれば、担当外のページを誤って編集するリスクを抑えられます。あわせて、部署内で完結する承認から、広報課や幹部層まで含む多段階の承認まで、情報の重要度に応じて承認ルートを設定できるワークフロー機能も欠かせません。人事異動で担当者が入れ替わる自治体では、運用ルールやマニュアルを整備し、誰でも同じ品質で更新できる体制を整えることも重要です。
拡張性や外部連携に優れているか
防災情報システムやSNSなど、現在利用しているサービスとの連携が必要かを整理し、対応するAPIや連携方式を確認しましょう。住民情報などの個人情報を扱うシステムとの連携を検討する場合は、必要性に加え、情報セキュリティやアクセス制御、データの取り扱いについても慎重に検討する必要があります。
また、観光サイトや子育て情報サイトなど、複数のサブサイトを一元管理できるマルチテナント機能があれば、管理を効率化できる場合があります。将来的な機能追加やデザイン変更に対応できる拡張性も、5〜10年単位での運用を見据えた重要な選定基準です。
サポートや保守体制は十分か
自治体への導入実績が豊富なベンダーは、セキュリティパッチへの迅速な対応や、自治体特有の運用フローへの理解が期待できます。電話・メール・チャットといった問い合わせ窓口の形態や、サービスレベル合意(SLA)の内容も事前に確認しましょう。
自治体向けCMSの契約は、5年程度の長期運用を前提とする場合があります。5年以上の保守契約が可能か、契約期間中のバージョンアップ方針はどうなっているかを、選定段階で確認することが重要です。
総所有コストは予算に見合っているか
CMSの選定では、要件定義・構築・移行にかかる初期費用、月次運用費、保守費を合算した総所有コスト(TCO)を比較します。
クラウド型は、自前でサーバー環境を構築・管理する範囲を抑えられる場合があり、初期費用を抑えやすい選択肢です。一方、オンプレミス型は、既存の庁内環境や運用方針に合わせて構成を設計できます。どちらが適しているかは、初期費用だけでなく、保守費用や運用人員を含む総所有コストで比較しましょう。
自治体におすすめのCMS製品の比較と特徴
ここでは、市区町村での導入数が多い自治体特化型CMSから2製品、柔軟な構成に対応できる汎用型CMSから5製品を取り上げます。
自治体特化型CMSは、自治体向けのテンプレートや、緊急情報の発信、施設情報の管理といった機能があらかじめ揃っており、導入までの準備を進めやすい点が強みです。
汎用型CMSは、自治体サイト向けの機能があらかじめ揃っているわけではありませんが、構成やデザインの自由度が高く、外部システムとの柔軟な連携、ヘッドレス構成による複数媒体への配信、住民向けのログイン機能など、自治体特化型の標準機能を超える要件にも対応しやすい点が強みです。
その分、自治体サイトに必要な機能やテンプレートは、構築時に要件として定義し、作り込む必要があります。なお、サブサイトの作成や複数サイトの一元管理は、自治体特化型CMSでも対応している製品があります。
どちらが適しているかは、自庁の要件によって変わります。必要な機能や運用体制を整理したうえで、各製品の対応範囲を比較しましょう。
| CMS | タイプ | 主な特徴 |
|---|---|---|
| SMART L-Gov CMS(SMART CMS) | 自治体特化型(クラウド型) | 自治体向けのクラウドCMS。 市区町村での導入数は271団体。(日本広報協会2025年度調査) |
| ネットクルーCMS | 自治体特化型 | 自治体公式サイト向けのCMS。 市区町村での導入数は207団体。(日本広報協会2025年度調査)サブサイト機能を備える。 |
| Movable Type | 国産商用CMS(静的・動的対応) | 国内導入実績が豊富。権限管理や認証セキュリティ機能が充実。 |
| PowerCMS | 国産商用CMS(静的生成) | 承認ワークフローを標準搭載。アクセシビリティ検証プラグイン(PowerCMS 8341)が全エディションに無償で付属。ISMS認証取得。 |
| microCMS | 国産ヘッドレスCMS | 表示速度やデザインの自由度が高い。日本語の公式ドキュメントあり。 |
| Liferay | デジタルエクスペリエンスプラットフォーム | コンテンツ管理に加え、認証・権限管理・外部システム連携を1つの基盤で扱える。 |
| Kuroco | 国産ヘッドレスCMS | 承認ワークフロー、多言語、フォーム、会員管理が標準搭載。ISMS認証取得。 |
SMART L-Gov CMS(SMART CMS)
SMART L-Gov CMSは、ウイングアークNEX株式会社が提供する自治体向けのCMSです。もともとは株式会社スマートバリューが提供していましたが、2025年6月にウイングアーク1st株式会社の子会社であるウイングアークNEXが事業を承継しました。同社の地域情報プラットフォームSMART L-Gov上で動くクラウド型のサービスで、自庁でサーバーを用意する必要がありません。
日本広報協会の2025年度調査では、SMART L-Gov CMSを含むSMART CMSの市区町村での導入数が271団体と最も多く、2024年8月には全国47都道府県すべてで導入自治体を持つに至っています。提供元は、JIS X 8341-3:2016の適合レベルAAへの準拠、スマートフォンやSNSへの対応、災害時にも安定した運用体制などを特徴に挙げています。自治体向けの標準機能で公式サイトを運用したい場合の有力な候補です。
参照
- ウイングアークNEX株式会社「沿革」
- 株式会社スマートバリュー「SMART L-Gov CMSが全国47都道府県へのサービス契約締結を達成」
- ウイングアークNEX株式会社 プレスリリース(PR TIMES)
ネットクルーCMS
ネットクルーCMSは、福泉株式会社(愛媛県松山市)が提供する自治体公式サイト向けのCMSです。日本広報協会の2025年度調査では、市区町村での導入数が207団体と、SMART L-Gov CMSに次いで多くなっています。
施設情報やイベント情報などをデータベースで管理し、専用の検索コーナーとして公開できる機能を備えています。更新担当者の習熟度に合わせて選べるページ作成モードや、サブサイト機能も特徴です。部署ごとのミニサイトや専用コーナーを作り、多くの情報を整理して発信したい自治体に向いています。
参照
- 福泉株式会社「ネットクルー」「公開後も職員様で自由にミニサイト作成が可能」
Movable Type
Movable Typeは、シックス・アパート株式会社が提供する国産CMSで、国内で長く使われてきた導入実績の豊富さが特徴です。権限管理や認証まわりのセキュリティ機能も備えています。ページを静的HTMLとして書き出せるため、表示速度やアクセス集中時の安定性の面でも自治体サイトに適しています。
注意点として、標準版には多段階の承認ワークフローが含まれていません。承認フローが必要な場合は、ワークフローパックの追加か、ワークフロー機能を備えた上位製品のMovable Type Premiumを検討します。
また、ソフトウェア版はライセンス購入後も、2年目以降は年間メンテナンス費用が毎年かかります。5年程度の長期運用を前提に、ライセンス費、メンテナンス費、バージョンアップ対応費を合算して比較しましょう。過去にMovable Typeで構築したサイトを持つ自治体は、テンプレートやデータの資産を生かしやすい点もメリットです。
参照
- シックス・アパート株式会社「Movable Type」
PowerCMS
PowerCMSは、アルファサード株式会社が開発する国産の商用CMSです。もともとMovable Typeの機能を拡張する製品として生まれ、現在は独立したCMSとして官公庁や大規模サイトで採用されています。
承認ワークフローを標準で備え、アクセシビリティ検証プラグインのPowerCMS 8341もすべてのエディションに無償で付属しているため、代替テキストの入力漏れなどを公開前に確認できます。また、ページを静的HTMLとして生成し、CMSのサーバーと公開用のサーバーを分けて運用できるため、セキュリティを確保しやすく、アクセス集中時の負荷にも強い構成をとれます。複数部署が多段階の承認を経て公開する運用や、JIS X 8341-3への適合を重視する自治体に向いています。
参照
- アルファサード株式会社「PowerCMS」
microCMS
microCMSは、株式会社microCMSが提供する国産のヘッドレスCMSです。日本語の管理画面と公式ドキュメントが整っており、技術者以外の職員でも扱いやすい設計になっています。
表示部分を自由に設計できるため、表示速度やデザインの自由度が求められる観光・移住促進サイト、シティプロモーションサイトなどに向いています。無料のプランから始められるため、特設サイトを小さく立ち上げて検証する使い方も可能です。
一方、本庁の公式サイトのように、多数の部署が多段階の承認を経て公開する運用では、プランごとに利用できる承認・権限機能の範囲を事前に確認する必要があります。(権限管理やIP制限は、Businessプラン以上で利用できる機能です。)
Kurocoと同様に表示部分は別途構築が必要なため、アクセシビリティ対応や静的HTMLの書き出しは、構築ベンダーの設計に左右されます。
参照
- 株式会社microCMS「microCMS」
Liferay
Liferayは、米Liferay社が開発するデジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)です。CMSとしてのコンテンツ管理に加え、ユーザー認証、権限管理、ワークフロー、外部システムとのAPI連携を1つの基盤で扱える点が、ほかの製品との大きな違いです。
住民向けのログイン機能を備えたマイページ、職員向けの庁内ポータル、本庁サイトと関連サイトの統合管理など、Webサイトの公開だけにとどまらない用途を想定する大規模自治体に向いています。自前のサーバーで運用する形態のほか、クラウドで提供される形態も選べます。
現在は、無償で利用できるFree Tierと有償のEnterprise Subscriptionの2形態で提供されています。ただし、Free Tierは開発や検証、小規模利用を想定したもので、多要素認証やSAML連携などの機能はEnterprise Subscriptionでのみ利用できます。住民の個人情報を扱う用途では、有償版の利用と、Liferayの構築実績を持つベンダーによる支援を前提に検討しましょう。
参照
- Liferay「Liferay DXP Free Tier」
Kuroco(クロコ)
Kurocoは、株式会社ディバータが提供する国産のヘッドレスCMSです。承認ワークフロー、多言語、フォーム、会員管理といった自治体サイトで必要になりやすい機能を標準で備えています。
料金はAPIの利用量やデータ転送量などに応じた完全従量課金制で、管理画面を使う職員の人数では課金されません。そのため、各課の職員がそれぞれアカウントを持って更新する運用でも、ライセンス費用が膨らみにくい点が自治体にとっての利点です。
ヘッドレスCMSは、コンテンツの管理画面と住民が閲覧するWebサイトの表示部分が分かれた構成です。そのため、表示部分は構築ベンダーが別途開発する必要があり、プレビュー機能や静的HTMLの書き出し方法は、構築時の設計によって変わります。仕様書の段階で、職員が公開前にページの見た目を確認できるか、緊急時にアクセスが集中しても表示できる構成かを要件として明記しておきましょう。
参照
- 株式会社ディバータ「Kuroco」
自治体Webサイトのリニューアル・CMS更改をお考えの担当者さまへ
自治体向けCMSの導入プロセス
自治体のCMS更改は、予算編成と調達手続きを挟むため、構築作業に入る前の準備期間が長くなります。現行契約の満了時期から逆算し、更改の1〜2年前から準備を始めるのが一般的です。
実際の手順や期間は、自治体の予算編成、調達方式、庁内の意思決定プロセスによって異なります。ここでは、自治体の年度の流れに沿って、CMS更改で一般的に検討する工程を整理します。
1.現行サイトの棚卸しと更改方針の整理
最初に、現行のCMSとサイトの状態を把握します。現行契約の満了時期、総ページ数、更新に関わる部署と職員数、アクセスの多いページ、外部システムとの連携状況などを一覧にしておきましょう。
あわせて、ウェブアクセシビリティ方針の達成状況や、直近の試験結果も確認します。課題が整理できたら、更新作業の分散、緊急時の発信体制の強化、アクセシビリティの改善など、今回の更改で何を実現するかを方針としてまとめます。この方針が、後の仕様書や評価基準の土台になります。
2.情報収集と予算要求
方針が固まったら、複数のベンダーから製品情報や概算見積もりを集めます。情報提供依頼(RFI)を行い、製品の機能や費用の幅を把握しておくと、根拠のある予算額を算出しやすくなります。
多くの自治体では、前年度の予算編成の時期に次年度の事業費を要求します。初期費用だけでなく、5年程度の運用保守費を見込んだ総額で説明できるよう、TCOの試算を準備しておきましょう。
3.仕様書・提案依頼書(RFP)の作成
予算の見通しが立ったら、調達仕様書と提案依頼書を作成します。必須機能、対象範囲、スケジュール、保守期間などを具体的に書くほど、各社の提案を同じ条件で比較しやすくなります。
自治体サイトの仕様書では、特に次の項目を明記しておくと、構築後の追加費用や対応漏れを防げます。
- アクセシビリティの適合目標(JIS X 8341-3:2016の適合レベルAA、WCAG 2.2への対応方針、試験の実施と結果の公開)
- セキュリティ要件(LGWANからの利用、WAF、二段階認証、バックアップ、脆弱性への対応)
- 静的HTMLの書き出しなど、アクセス集中時の可用性に関する要件
- データ移行の範囲と、旧URLから新URLへのリダイレクト対応
- 職員研修、操作マニュアル、ヘルプデスクの提供範囲
- 保守期間と、契約期間中のバージョンアップ方針
4.調達方式の決定とベンダーの選定
CMSの調達では、価格に加えて提案内容や体制を評価するプロポーザル方式が多く用いられます。価格を中心に決める一般競争入札を採用する自治体もありますが、操作性や運用支援の質を比べにくい点に注意が必要です。
プロポーザル方式の場合は、評価項目と配点を事前に定めて公表します。操作性のデモや、自治体での運用実績、アクセシビリティ対応の進め方などを評価項目に含めると、課題解決に適したベンダーを選びやすくなります。
5.設計・構築・移行・試験
契約後は、サイト構造、ナビゲーション、ページテンプレート、承認ルートなどを設計し、構築を進めます。ベンダー任せにせず、各課の代表者を含めて設計内容を確認する場を設けると、運用開始後の手戻りを防げます。
構築と並行して、現行サイトのコンテンツを移行します。公開前には、住民の利用場面を想定した動作確認に加え、JIS X 8341-3に基づくアクセシビリティ試験とセキュリティ診断を実施しましょう。試験結果は、新サイトで公開するアクセシビリティ方針のページにも活用できます。
6.公開・研修・運用定着
公開前には、更新を担当する職員向けの操作研修を行い、運用マニュアルを配布します。新サイトの公開日や主な変更点は、住民にも事前に告知しておきましょう。
公開後は、アクセス解析や住民・職員からの意見をもとに改善を続けます。総務省のガイドラインでは、ウェブアクセシビリティへの取り組みを年1回確認・評価し、結果を公開することが推奨されています。研修、検証、改善を年間の業務計画に組み込んでおくと、担当者が替わっても取り組みを継続できます。
自治体向けCMS導入時の注意点
CMS導入後に後悔しないよう、よくある落とし穴を事前に把握しておきましょう。
アクセシビリティにかかわる運用体制の不備
CMSにアクセシビリティ支援機能が搭載されていても、掲載コンテンツ自体が対応していなければ、その効果は限定的です。自治体サイトでは、PDFにタグが付いていない、画像のalt属性が空欄になっている、バナーのコントラスト比が不足しているといった課題がよく見られます。
CMSだけで、アクセシビリティの問題をすべて自動的に解決できるわけではありません。alt属性の入力ルールやPDFのタグ付け手順を運用マニュアルに明記し、コンテンツ作成の段階から対応できる体制を整えることが重要です。担当者が毎年替わることを前提に、アクセシビリティの確認項目をチェックリストにまとめておくと、継続的な対応につながります。
移行対象を整理しないまま移行する
現行サイトのページをすべてそのまま移行すると、情報が古いページや重複したページまで新サイトに持ち込むことになります。住民が必要な情報を探しにくくなるだけでなく、移行作業の費用や工数も増えてしまいます。
移行前に、ページごとに「そのまま移行する」「内容を更新して移行する」「統合する」「削除する」を判断し、一覧にまとめておきましょう。各課の担当ページを確認してもらう期間も、スケジュールにあらかじめ組み込んでおくことが大切です。
URL管理不足による移行設計リスク
CMS移行では、可能な限り既存URLを維持すると、利用者や外部サイトからのリンクを引き続き利用しやすくなります。URLを変更する場合は、旧URLと新URLの対応表を作成し、適切な301リダイレクトを設定するとともに、移行後はクロール状況やインデックス登録状況を確認しましょう。
こうした対応は構築ベンダーに委ねることになりますが、仕様書でリダイレクト対応の要件を明確にしておかないと、追加費用が発生したり、対応漏れが起きたりする可能性があります。移行設計は、要件定義の早い段階で着手しましょう。
運用マニュアルの曖昧さ
複数部署でCMSを利用すると、部署ごとに更新品質に差が出るおそれがあります。送り仮名の表記や、数字・英数字の全角/半角といった表記の統一、公開前の確認フロー、ファイルの命名規則、更新後の表示確認方法を明文化した運用マニュアルを整備しましょう。
自治体では定期的に人事異動があるため、担当者が替わっても迷わず運用できるマニュアルが、長期的な運用の鍵です。初めてCMSを操作する職員にも分かるよう、スクリーンショット付きの手順書を用意すれば、引き継ぎの負担を最小限に抑えられます。「誰が使っても同じ品質で更新できる状態」を目指し、CMSの導入前から運用設計を進めることをおすすめします。
まとめ:自治体向けCMSは要件を明確にして選び、安定運用につなげよう
自治体向けCMSを選ぶ際は、必要な機能、アクセシビリティ、セキュリティ、多言語対応、運用体制、サポート、導入・保守を含む総費用を整理し、自庁の要件に照らして比較することが重要です。そのうえで、調達仕様書に「JIS X 8341-3 AA準拠」「WCAG 2.2への対応方針」「LGWAN対応」「静的HTML書き出し」などの要件を明記しましょう。調達方式の選択から移行・研修、運用ルールの整備まで段階的に準備を進めることで、人事異動後も安定して運用できる体制を構築できます。
各製品の詳しい機能や費用の目安は、各ベンダーへの問い合わせや資料請求を通じて、最新情報をご確認ください。
自治体向けCMSは、製品を選ぶだけでなく、調達仕様書の作成から移行、研修、運用ルールの整備まで、一連の準備をどう進めるかが成否を左右します。EWMグループでは、東京都をはじめとする自治体・行政・官公庁のWebサイト制作から運用までを一気通貫でご支援しています。規模や運用体制に合ったCMSのご提案もいたしますので、お気軽にご相談ください。
自治体Webサイトのリニューアル・CMS更改をお考えの担当者さまへ
自治体向けCMSに関するよくある質問
- 自治体特化型CMSと汎用型CMSは、どちらを選ぶべきですか?
-
自庁の要件によって変わります。自治体特化型の標準機能で十分な場合は、導入準備を進めやすい自治体特化型が候補になります。外部システムとの柔軟な連携や住民向けのログイン機能など、自治体特化型の標準機能を超える要件がある場合は汎用型も比較しましょう。
- クラウド型とオンプレミス型は、どちらが自治体に向いていますか?
-
クラウド型は、サーバーの調達や管理の負担を抑えやすく、初期費用も抑えやすい選択肢です。オンプレミス型は、既存の庁内環境やセキュリティ方針に合わせて構成を設計できます。初期費用だけでなく、保守費や運用人員を含めた総所有コストで比較することが大切です。
- LGWAN環境からCMSを利用できますか?
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製品や構成によって異なります。庁内のLGWAN接続系の端末から管理画面を操作する場合は、その経路に対応した構成をとれるかを、ベンダーに事前に確認しましょう。仕様書にも、利用する端末とネットワークの条件を明記しておくことをおすすめします。
- JIS X 8341-3の改正前に、何を準備しておくべきですか?
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現行のJIS X 8341-3:2016に基づく対応を進めつつ、改正後の内容に相当するWCAG 2.2の達成基準も確認しておきましょう。CMSを更改する場合は、仕様書にWCAG 2.2への対応方針を含めておくと、改正後の追加改修を抑えやすくなります。
- CMSの更改準備は、いつから始めればよいですか?
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予算要求と調達の期間を考えると、現行契約の満了の1〜2年前から準備を始めるのが目安です。予算要求の前に情報収集と概算見積もりを済ませておくと、根拠のある予算額を示しやすくなります。